釧路湿原でカヌー体験!
美しい大自然と野生動物を超至近距離で!
公開日:2024.11.01
アレキナイ川でカヌー体験
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釧路湿原の基本情報
釧路川
ひがし北海道(道東)は、手付かずの自然が広がる雄大なエリアです。北海道東部を代表する港町「釧路」の市街地から車で約20分ほどの場所にあるのが、日本最大の広大な湿原「釧路湿原国立公園」。貴重な動植物たちの生息地ともなっていて、その希少性から一部がラムサール条約に登録されています。この大自然の中に流れている釧路川では、カヌー体験ができる様々なツアーが用意されています。実は国立公園でカヌーができる場所は日本に数ヶ所しか無く、そのひとつがここ、釧路湿原。タンチョウやオオワシ、エゾシカなどの野生動物を間近で観察することができます。釧路湿原では通年カヌーツアーを開催していて、ガイドの解説を聞きながら安全に大自然を楽しむことができます。今回は釧路湿原を中心としたカヌーツーリング、ネイチャー体験ができる「East power」のガイド・松澤さんにアテンドしていただきながら、実際の体験談をご紹介していきます。カヌー体験を考えているあなたにおすすめの内容が盛りだくさんです!
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カヌー体験
カヌー体験前の出発準備
1.集合・出発
East powerのカヌー体験では約1時間で川下り体験ができるライトなプランや、5時間かけて釧路湿原を楽しみきるプランなど様々なコースが用意されています。今回は約1時間で釧路湿原の東側を流れる釧路川下流域・アレキナイ川を早朝に往復することができるコースを体験してきました。アレキナイ川は釧路湿原国立公園に含まれる海跡湖・塘路湖から釧路川本流へと続く全長2kmの短い川。水流も穏やかなため、ゆっくりと大自然の景観と野鳥や野生動物たちの息遣いを感じることができます。

集合場所はJR塘路駅。釧路市内からは約40分ほどで到着します。現地に到着すると、松澤さんが車でお出迎えにきてくれ、カヌーの出発点・塘路湖まで2分ほど移動します。

到着後は必要書類にサインし、お支払いを済ませたら早速体験開始。まずは事前に申告した身長・体重に合わせて用意していただいていたライフジャケットを着用し、貴重品を耐水バッグにしまったら安全対策のお話を聞きます。一番注意したい事故が転覆。すべての事業者を含めて年間1.2件は転覆事故が発生しているため、安全のためにもガイドの指示はしっかり聞くようにしましょう。ちなみに、East powerで転覆の経験はないとのこと。これにはアウトドアが苦手な筆者もホッと一息でした。

用意ができたら、早速カヌーに乗って出発!3人乗りのカヌーで、ガイドの松澤さんも同乗するため初心者でも安心です。
2.塘路湖を抜け、アレキナイ川へ
アレキナイ川
この日は早朝の体験だったため、水面から立ち上る霧で幻想的な雰囲気に包まれた塘路湖と朝日が昇る大自然のコントラストを楽しむことができました。景色をじっくりと楽しんだら、塘路湖から続くアレキナイ川へと進んでいきます。アレキナイ川は川幅が狭く、すぐ隣には木々が生い茂っていてまるで森の中を進んでいるかのような体験をすることができます。「この川をはじめ、釧路川は護岸工事がされていない自然のままの状態なんです。ここをカヌーで進んでいける環境は全国的にみてもかなり珍しいもの。手付かずの自然だからこそ、野生動物の息遣いをすぐ近くに感じることができます。秋から冬にかけては木々の葉が落ちるので、動物を探しやすい時期でおすすめです(松澤さん)」

カヌーを漕いでJR釧網本線の陸橋をくぐると広がるのは、釧路湿原の大パノラマ。カヌーと並走して悠々と泳ぐ渡り鳥・カモのつがいや、木陰からこちらをひっそりと見つめているエゾシカ、木の上から獲物を狙うトビの姿に出会うことができました。
木の上から獲物を狙うトビ
3.釧路川本流で折り返し
アレキナイ川を下って釧路川本流に差し掛かると、折り返し地点。川を挟んで対岸にあるのはJR釧網本線が走る線路です。この日はまだ早朝だったため列車が走る光景は見ることができませんでしたが、代わりに線路を走るモフモフのキタキツネが。タイミングによっては、冬季限定で運行する「SL冬の湿原号」を、釧路川から見ることができるかも。「釧路川は水流が早くコースも長いので、よりアクティブなカヌー体験を楽しめます。一方アレキナイ川は流れがほとんどなく穏やかな川なので、初心者の方やライトにカヌーを楽しみたい方におすすめですね(松澤さん)」この日は前日に降っていた雨の影響で、川が逆流している珍しい日。アレキナイ川は高低差がほとんどないため起こる現象だそう。
アレキナイ川でカヌー体験
湖に戻っていく復路では、流れに乗ってほとんどカヌーを漕ぐことなく進んでいきました。そして、川が増水していたことで普段なら枯れてしまっている水路に立ち寄れるというレアな体験も。「自然のままの川だからこそ、毎日状況は変わっているんです。川の形も、見られる景色も1日1日違うので何度でも楽しめるのが特徴ですね。早朝と夕方、春夏秋冬で全く違う光景が広がります。タイミングを変えて何度も体験しにくるリピーターさんもいらっしゃいますよ(松澤さん)」
4.アレキナイ川を引き返しながら、塘路湖へ
アレキナイ川
進んできた川をUターンする形で引き返していきますが、驚いたのは目の前に広がる景色。同じ場所を進んできたはずなのに、往路と復路で全く違う川を進んでいるような感覚になりました。時間が経過して日の当たる角度が変わったことによる木々の表情の変化や、往路では見ることができなかった角度での自然や野生動物の息遣いを感じることができるから。また、復路では水流も変化するためカヌーが進む速度も変わっていくのも大きな違い。太陽の光を浴びながら進んでいくと、突然頭上を大きな影が横切ります。そう、私たちの頭上を飛んでいたのは特別天然記念物にも登録されているタンチョウ。羽を広げると2m以上の大きさになる日本最大級の鳥で、ここ釧路湿原に多く生息している希少な動物です。「タンチョウは日本で1,900羽ほどしかいない希少な鳥です。そのうちの2羽の姿が見れたなんてラッキーですね!カヌー体験では、5回に1回くらいの確率で姿を見ることができますよ(松澤さん)」一瞬の出来事だったためカメラに収められなかったのが残念でしたが、その姿は壮観。大興奮していると木の麓に、超至近距離でこちらをじっと見ているオスのエゾシカが。「秋はオスのエゾシカがかなり過敏になる時期で、激しい鳴き声を聞くことができます。またこの時期はシカの角が一番美しいんです。角の大きさによって大体何歳くらいのシカかわかりますよ(松澤さん)」
エゾシカ
5.塘路湖へ戻り、体験終了
塘路湖
アレキナイ川を抜け塘路湖に戻る頃にはすっかり日も高くなり、太陽の光に照らされた水面がキラキラと輝いていました。時間や場所によって、見られる景色が全く違うという松澤さんの言葉を肌で実感。「参加されたお客様からは、まるで日本じゃないみたいという声を多く聞きますね。それほどまでに釧路湿原で見ることのできる自然は雄大で、別格なんです。だからこそ、より幅広いお客様に楽しんでもらえるような展開も考えています。今は1名体制で運営しているため1〜2名のみ予約を受け付けていますが、今後は家族でも楽しめるような体験をしたいと思ってるんです。もちろん1組貸切のツアーは変えずに、釧路湿原の大自然を独り占めしてもらえるような時間をご提供します(松澤さん)」約1時間のツアーとは思えないほど、あっという間の時間。初めてのカヌー体験でも安心して、松澤さんのガイドを聞きながら大自然と野生動物の姿を堪能することができました。展望台からは見ることのできない、カヌーの目線から見た釧路湿原はまさに「非日常」の体験。訪れた際にはぜひ体験してほしいおすすめのアクティビティです。
注意点/おすすめの服装
大自然を進むカヌー体験だからこそ、注意したいのは安全対策。カヌーの上では「急に振り向く」「勝手な動きをする」などの行動は転覆事故につながる可能性もあるのでNG。また、ツアー体験中にはお手洗いに行くことができないため事前に済ませておくことを忘れずに。どうしても船酔いが酷い人は、念の為に薬などを飲んでおくと安心かもしれません。また気をつけたいのは服装。夏場は虫が発生するため、必ず長袖を着ておくことをおすすめします。また、秋から冬は防寒ダウンや手袋、帽子やマフラーなどで外気を遮断して。「朝は暖かかったから大丈夫!」と思っていても、風があるカヌーの上で長時間じっとしていると身体の芯が冷えてきます。特に早朝、夕暮れの体験時はしっかり対策をしておくと安心です。
今回ご紹介したカヌーのご予約はこちら!
【春夏秋冬アレキナイリバー】 All season canoe
East powerのご紹介
East powerの松澤さん
East powerでは通年を通して釧路湿原のカヌー体験やネイチャーツアーを提供しています。四季によって移り変わる釧路湿原の大自然や、冬の時期にはスノーシューを履いて雪原の上の散策が楽しめるとあって大人気。代表を務める、ガイドの松澤さんは釧路市出身。地元を離れアパレルの仕事をしていたものの「昔から好きだったアウトドアに関わる仕事がしたい」と考え、地元・釧路に戻ってきました。そこで先輩カヌーガイドに出会い、ガイドツアーを運営する会社に就職。カヌーやネイチャーガイドの実践経験を積みながら、2020年に独立しEast powerを立ち上げました。

「カヌー体験っていうとちょっと怖いな、自分じゃ乗れないなって思われる方も多いんです。でも実はそんなことはなくて。風が強い日は少しお手伝いをいただきますが、基本的には自分で漕ぐ必要はほとんどありません。だからアウトドアが得意じゃない人でも、安心して楽しんでもらえるアクティビティですね」

そう語る松澤さんが大切にしているのは、自然の中でゆったりと過ごす非日常の時間。早朝は他の利用者が少ないため、雄大な大自然を独り占めできるおすすめの時間です。取材当日は風が穏やかな時間も多く、寒い早朝の日しか見られない「毛嵐(けあらし)」も見ることができました。早朝は野生動物が活発に活動するため、動物の息遣いが間近で感じられるカヌー体験を味わえます。「旅をするのも好きで全国各地色々なところを巡ったのですが、いつ見てもすごいなと思うのが地元の自然・釧路湿原でした。湿原の雄大な自然が織りなすこの景色は唯一無二のものだと思います。この景色を多くの人に見て、感じてほしいと思ってカヌー・ネイチャーガイドになったんです(松澤さん)」その想いの通り、今回のカヌー体験では湿原と釧路川の美しい景色をじっくり堪能することができました。
アクセス
予約プランによって集合場所が変更になるため要確認
1.塘路駅→釧路駅からJR釧網本線乗車(約33分)
2.細岡駅→釧路駅からJR釧網本線乗車(約25分)
3.遠矢駅→釧路駅からJR釧網本線乗車(約14分)
03
釧路湿原について
自然豊かな釧路湿原は、四季折々でさまざまな見どころがあります。春は雪解けで水量が増えるため、今回体験したカヌーで釧路川を満喫したりバードウォッチングや野生動物の観察もおすすめ。秋には色鮮やかな紅葉を眺めながら、キラキラと輝く水面との美しい景色を楽しむことができます。冬には真っ白の大雪原に足跡をつけていく、スノーシューでの散策も人気。釧路湿原の魅力やアクティビティについて詳しくまとめた記事は こちら から!
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まとめ
今なお手つかずの雄大な自然が広がる、ひがし北海道。この場所だからこそ、自然体のまま暮らしている動物たちに出会うことができます。日常生活では味わえない自然のスケールと、共存している動物たちの息遣いを間近で感じられるのはひがし北海道ならでは。レアな動物に出会ったときの興奮は、記憶に残るものになること間違いありません。さあ、あなたも大自然の中希少な野生動物たちとの出会いを楽しんでみませんか?
ライター情報
奥村 菜依加
奥村菜依加(なえか)
1994年生まれ、北海道北見市出身。道内金融機関に6年間勤務。その後北見市の映像プロダクション・株式会社北映Northern Filmsにチーフマネージャー・ライターとして在籍。2023年退職、コピーライター・取材ライターとして独立。屋号はProduce One。